軒の深い日本家屋をリノベーションされたお施主様。
建物の持つ和の空気感に寄り添いながら、庭もこのタイミングで整えることになりました。



もともとの庭には大きく育った樹木が茂り、長い時間をかけてつくられてきた景色がありました。
それらをすべて一新するのではなく、活かせるものは残しながら新しい空間として再構成しています。
計画の中で軸となったのは「プライベートな庭で過ごす時間を楽しむこと」。
ウッドフェンスで外部からの視線をやわらかく遮り、広いウッドデッキで食事やくつろぎの時間を過ごせるように。
その中心には既存のカキノキを残し、この場所にもともとあった時間の流れを取り込みました。

フェンスは森の木立をイメージした縦張りとし、板幅にリズムを持たせることで閉じすぎず開きすぎない心地よい囲まれ感をつくっています。

庭への入り口には建物の千本格子に呼応するハードウッドの縦格子の扉を設けました。
正面からは庭の気配が感じられ斜めからの視線は遮る設計としています。


既存の大谷石の壁は洗浄して表情を整え、景石や飛石も配置を見直して再利用。
新しいものともともとあったものが自然につながるように構成しました。





施工は、大きな樹木の整理から始まり、ウッドフェンス、ウッドデッキと空間の骨格をつくっていきました。
フェンスが立ち上がった段階で庭の背景が整い、空間の印象が大きく変わっていきます。









現場では、朝・昼・夕方と光の入り方が変わるたびにフェンスやデッキ、外壁に映る樹木の影が美しく、完成前からこの庭のポテンシャルを強く感じていました。


その後、植栽工事へ。
木々や下草が入ることで空間にやわらかさと生命感が加わり、庭の空気が一段と豊かになっていきます。


完成したのは、ちょうど春。
光と風、そして緑が重なり合う庭が出来上がりました。
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完成後、お施主様はウッドデッキにテーブルとイスを出して日常的に食事を楽しまれているそうです。
ご親戚を招いてガーデンパーティを開くこともあり、この庭が人の集まる場所として使われていると伺いました。
また、朝の時間にはウッドフェンスに風にそよぐ樹木の影が映り、とてもきれいだと教えていただきました。
設計時に意図していた光と影の表情が実際の暮らしの中で感じられていることを嬉しく思います。

庭の中では日々さまざまな花が咲き、少しずつ景色が変わっていく様子も楽しまれているとのこと。





つくって終わりではなく、そこから時間とともに育っていく庭。
この場所で過ごす時間が日常を少し豊かにしてくれることを願っています。

紅葉の季節にはまた違った表情になるはずです。
その頃にもう一度この庭を訪れるのが今から楽しみです。